大人の発達障害、会社に理解と配慮をしてもらうには

苦手なことがある一方で得意なことがあるのが大きな特長

ASD(自閉症スペクトラム障害):

 おとなしい人が多い。コミュニケーションの取り方、社会性、想像力に偏りがあり、空気を読むのが苦手。職場では人間関係を築くのが不得意で、目上の人に対して失礼な態度をとってしまうことも。こだわりが強く、働き方を柔軟に変えたり、臨機応変に計画を変更するのが難しい。

<得意なこと>
 規則的、計画的に行う仕事。同じ作業を繰り返す仕事。専門知識を使う仕事。膨大な情報量を扱う仕事。製品を管理・整理する仕事。

<不得意なこと>
 臨機応変に計画を変更する仕事。顧客ごとの個別対応を求められる仕事。対話中心で、形にならない仕事。

ADHD(注意欠如・多動性障害):

 忘れ物や失くし物が多く、不注意、衝動性、多動性(じっとしていることが苦手)があり、落ち着きがないように見える。仕事上のケアレスミスが多く、気を付けていてもミスは減りにくいため、文字や数字の細かい確認が多い仕事は不得意。長期的な計画を立て、じっくり進める仕事も苦手。

<得意なこと>
 手早く作業する仕事。自主的に動き回る仕事。ひらめきや企画力を求められる仕事。新しい情報を集める仕事。移動が多く、よく身体を動かす仕事。

<不得意なこと>
 文字や数字の細かな確認が多い仕事。長期的な計画を立て、じっくり進める仕事。自分から動くよりも待つことが多い仕事。

 さて、ここまで発達障害とはどういうものか、苦手なことがある一方で、得意なこともあるという特徴についてお話ししてきました。

 次に取り上げるのは一般の方にはあまり聞きなれない「ジョブコーチ」と「コーディネーター」についてです。

◆ジョブコーチとは:

 ジョブコーチは厚生労働省が定めた、障害者の就労支援を行う役割の専門職のことを言います。日本では2002年に障害者雇用促進法が改正されて、制度化され、まず障害者職業センターや福祉施設から企業の職場に派遣されて、障害者の就労を支援する職場適応援助者として導入されました。

 また、企業に在籍しながら障害者の就労を支援する「企業在籍型ジョブコーチ」が制度化され、現在は「配置型」「訪問型」「企業在籍型」の3つがあります。

 ジョブコーチの最も大きな役割は「環境調整」です。本人の障害特性と職場環境の調整を図り、また、本人だけでなく職場の上司や同僚の皆さん、本人の家族の方々への支援も行うのが特徴です。

 主な業務内容は

・職場の人間関係やコミュニケーションを円滑にする
・障害者との関わり方や、業務依頼の方法などを助言
・本人が業務上の課題を改善、または業務を習得するための支援
・本人に適した職務内容の検討

などです。

 ジョブコーチの利用を希望する場合は、障害者職業センターに問い合わせて申し込むことができます。費用は無料。支援対象となる社員は障害者手帳の有無にかかわらず利用できますが、利用には事業主と支援を受ける本人の両者の承諾が必要です。

 本人の承諾が必要という訳は、「周囲は何となく気づいているけれども、本人に、発達障害であるという自覚があるかどうかわからない」というケースで、本人の同意がないまま、ジョブコーチが関われば「障害者として差別された」という問題になりかねないからです。

 こういう場合は、まずは診断から始める必要がありますが、本人に「自分は発達障害である」という自覚がないケースでは、「発達障害かもしれないので、診断を受けてみませんか」と薦めること自体が、ハラスメントとして受け取られかねません。「自分の障害を知られたくない」と頑なに固辞している場合もあり、こうしたケースでは労務問題に発展することもあるため、注意が必要です。

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