幼少期からの発達障害に双極Ⅱ型障害が合併するケース増加中。対処の鍵とは?

診断が難しい双極Ⅱ型障害、誤った薬が処方されていることも

 2003年に私が虎ノ門で精神科クリニックを開業した当初から、眠れない、食欲がない、気分が落ち込むといった「うつの症状」があって来院する患者さんは多くいました。

 そのうちに、今度は患者さん達の中に「この人は、もしかしたら、発達障害かも?」と思われる患者さんと、「こちらの患者さんは双極Ⅱ型障害のようだ」と思しき患者さん達が増えてきました。いずれも、障害由来の困り事があるために、ストレスを感じ、うつの症状が現れて来院した患者さんたちです。

 発達障害は本人が子供の頃に「年齢相応の発達」が見られないことに家族などが気づいて発覚することが多く、子供の障害のようにとらえられているのは今でも変わりません。しかし、近年では、子供の頃から苦手なことがあっても、その障害の程度がごく軽く目立たないために、周囲に気づかれないまま大人に成長するケースが目立ってきています。私たちは、そうした発達障害を「大人の発達障害」と呼んでいます。

双極Ⅱ型障害診断にはごく短い「軽躁状態」の確認が必要

 そして、今回取り上げる患者さんは子供の頃からの「発達障害」に「双極Ⅱ型障害」が合併している患者さんです。

 「双極Ⅱ型障害」は長い「うつ」の期間がある中で、数日間のみというごく短い期間だけ「軽躁(けいそう:軽い躁)」が現われるのが特徴です。双極Ⅱ型障害と診断するためには、この、ごく短い軽躁状態が「ある」、または「あった」と確認する必要があり、診断に至るのが難しいものです。

 今回はこのケースについてお話ししていきます。

<この記事に掲載されている主な内容>
・発達障害の友人から話を聞き、自分にも同じ症状があると知った
・そもそも、発達障害とは?
・幼少期、小学生時代、中高大学時代は、どんな風であったか
・気分が落ちることもあるけれど、元気過ぎる時もあり
・双極Ⅱ型障害であると診断するのは実はとても難しい
・「双極Ⅱ型障害」と「うつ」では薬が大きく異なり、
 診断が間違っていれば、間違った薬が処方されていることに
・時折現われる「軽躁状態=ごく軽い躁状態」に気づくことが大事

 ここでは当クリニックの五十嵐良雄医師が、日経BPのWebサイト「日経グッデイ」で連載していた記事を日経BPの許可を得て掲載しています。

双極Ⅱ型障害に気づけなければ、正しい薬は処方されていない

第22回 要注意!発達障害ADHDに双極Ⅱ型障害が併存するケース
2023/10/30 五十嵐良雄=精神科医・東京リワーク研究所所長

 この連載では、私がこれまでに数多くの患者さんを診てきた経験から、クリニックの診察室で患者さんを診察する際に、

  • どのような視点で、患者さんの病状や体調から原因疾患を診断しているか
  • その診断を、どのように治療に結び付けているか

 という精神科医の診断と治療についてお話ししています。

 人の個性が、それぞれ異なり多様であるように、精神科という領域では典型的な疾患の患者さんばかりではありません。「似ているけれども、違う」。診察を進めていくと、そうした、患者さんによって異なる症状、異なる原因に遭遇します。

 この連載では、そういう場合に、精神科医はどのように診断して、治療に結び付けているかをお話ししています。

 例えば、「うつの症状がある」という場合でも、その原因は一つではありません。様々な要因があり、それぞれが関わり合って「うつ」という症状が表出している場合もあります。その原因が何であるか。どう判断するか、判断できるかによって、治療方法は変わってきます。

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