双極Ⅱ型障害は、ごく短い「躁(そう)」状態を見つけることがカギ

再休職を繰り返している場合は、別の疾患も疑おう

 近年、うつの症状で会社を休職した社員が、復職後に再び休職してしまい、再休職を繰り返すケースが増えています。その原因の一つが「双極Ⅱ型(そうきょくにがた)障害」です。これは長い「うつ」の間に、数日程度の、ごく短い「躁(そう)=気分が高揚する」状態があるのが特徴ですが、この「躁(そう)」状態を確認しない限り、双極Ⅱ型障害であると正しく診断できないのが特徴です。

「もしかしたら?」と疑ってみることがカギ

 本人も、周囲の人も「躁(そう)」状態に気づかない場合、「うつ」だけを繰り返しているように見え、正しい診断に至っておらず、正しい薬を処方されていないまま、その状況が長く続いてしまっていることもあります。

 再休職を何度も繰り返している場合は、この双極Ⅱ型障害を疑ってみて下さい。誰かが、もしかしたら?と思わない限り、見つけられないからです。

<この記事に掲載されている主な内容>
・診察室での短い時間では診断できない
・リワークプログラムでは参加中の様子から“違い”に気づく
・正しく診断されていなければ、逆効果の薬が処方されている場合もある
・別の原因がある可能性を知っておいてほしい

 ここでは当クリニックの五十嵐良雄医師が、日経BPのWebサイト「日経グッデイ」で連載していた記事を日経BPの許可を得て掲載しています。

うつ休職を繰り返す人の8割は双極Ⅱ型障害かもしれない?

第4回 ごく短く軽い躁に気づいて正しい診断につなげる
2021/3/10 五十嵐良雄=精神科医・東京リワーク研究所所長

 うつ病などの気分障害の患者数は全国で100万人を超えており、ビジネスパーソンにとって大きな健康問題です。この連載では、東京のビジネス街で精神科クリニックを開業する五十嵐良雄医師が、多くの患者さんを診た経験から、ビジネスパーソンが陥りがちなメンタルの罠(わな)についてアドバイスします。


うつ休職を繰り返す背景には、うつ症状の裏側に別の病気が隠れていることも?

 うつ休職を2度、3度と何度も繰り返している場合、うつ状態の裏に別の原因が隠れていることがあります。しかし、診察室での短い診察時間の中で医者がそれを見つけて診断することは難しく、正しい診断に至らぬまま、誤った治療が続いている場合が多いのが問題です。

 今回は、うつ休職を繰り返す原因となる背景疾患の一つ、「双極Ⅱ型(そうきょくにがた)障害」について、その特徴や治療、対応方法をお伝えしていきます。

 私のクリニックには、うつによる再休職を何度も繰り返している患者さんが転院してくることが多く、調べてみると、そうした人たちの実に8割という高い割合で、うつの症状の背景に、双極Ⅱ型障害があることがわかり、私自身も大変驚きました。私が診た範囲内での話ですが、再休職を繰り返している人が10人いたら8人が双極Ⅱ型障害の可能性があるということになります。

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