患者さん本人の気付きがきっかけで、診断が双極性障害(双極Ⅱ型障害)に変わったケース

気象庁発表よりも前に体調変化から台風発生を予測

 さて、ここからが本題です。Aさんが勤務先の会社に復職して1年ほど経った2011年に、南シナ海で台風が発生し、日本に近づいてきたことがありました。

 Aさんは「台風が近づいてくるにつれて、頭痛、嘔気(おうき:胃の中のものを吐き出したくなる切迫した不快感)、倦怠(けんたい)感などの身体症状が現れ、それらの症状が強くなると同時に、おっくう感、意欲の低下、憂鬱な気分、漠然とした不安感などの『うつ症状』が出現した」と言います。

台風が日本に接近してきた時にAさんに現れた症状

 ・頭痛、嘔気、倦怠感などの身体症状

 ・おっくう感、意欲の低下、憂鬱な気分、漠然とした不安感といった、うつの症状

 そして、台風は日本を直撃。その影響が続く間、Aさんの身体には、先に挙げた「頭痛、嘔気、倦怠感などの身体症状」や、「おっくう感、意欲の低下、憂鬱な気分、漠然とした不安感といった、うつの症状」が強く現れ続けていました。

気候条件と自分のその日の気分の関係をグラフ化したら…

 しかし、その後、台風が過ぎ去ると、それらの症状は消失。つまり、台風の到来とともに症状が現れ、台風が過ぎ去るとともに身体症状と「うつ」の症状が消えたのです。彼の体調が悪くなったのは、気象庁が台風の発生を発表する前であり、彼の体調変化は台風発生を予測していたのかもしれません。

 その後、台風だけでなく低気圧が日本に近づくと「身体症状と、うつ症状が強くなる」と感じるようになったと、ご本人は話しています。

 当初Aさんは、「気候(主に低気圧)」が「自分の病気の症状」に関連するとは考えていなかったと言いますが、数年前から、気候条件と自分のその日の気分の関係をグラフ化するようになりました。

2023年の8月のグラフが下図です。

 さて、「台風接近に伴う身体状態(うつ状態)の変化」図ですが、図の左半ば辺りから右下に向かって続く右下がりの直線が示すように、台風の接近によって、うつの状態が進んでいったことが分かります。

 しかし、うつ状態傾向がだんだん進んでいることを表している一方で、「意欲・気力」「思考・集中力」「体力・活動」という3つの指標を表す各線には、いくつもの山と谷があります。下がるばかりの「谷」だけでなく、上向きの「山」がいくつもあり、それが、山、谷、山、谷と続いていることが見て取れます。しかも、その山と谷は小さい波で1~2日で変動しています。山から谷への変動がつらいとAさんは言います。しかも台風が近づき、過ぎ去るまでの間はうつの傾向は下降線をたどり、だんだんと進んでいくのでそのつらさも加わることが理解できます。

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