別の原因がある可能性を知っておいてほしい
同業の医師を批判することになってしまうかもしれませんが、もちろん、私も同じ環境で診療していたら、同じように正しく診断できなかっただろうと思っています。それでも、少なくとも、うつの再休職を繰り返している患者さんには、うつの症状の裏側に、診断が難しい別の原因がある可能性について、知っておいてほしいと考えています。
現在は、仮に、うつの症状があって繰り返し休職している会社員が100人いるとしたら、おそらく8割の人が双極Ⅱ型障害の可能性があると考えています。また、少なくとも6割くらいの方に、発達障害の可能性があると考えています。
もしも、皆さんの近くに「うつによる休職」を繰り返している人がいる場合は、一度、背景に別の原因があるのではないか? と疑ってみてください。現在、全国に200以上あるリワークプログラムを行っている医療機関での相談が可能です。
リワークプログラムを行っている医療機関リスト
上記「一般社団法人日本うつ病リワーク協会リワーク施設一覧」をクリックして表示される画面で、お住まいの都道府県名から復職支援のデイケアなどを行っている各地の医療機関名が表示されます。参考になさってください。
また一方で、こうした「うつの症状」が表れる病気は、実は多数あります。例えば、脳腫瘍や脳卒中などの神経や脳の病気、女性の場合は甲状腺機能低下症(橋本病)や妊娠時期・出産後・更年期などに生じる内分泌(ホルモン)系疾患でもうつの症状が表れることがあります。このほか、がんや糖尿病、心筋梗塞などによっても。さらに統合失調症や、認知症の前段階にもうつの症状が現れることが知られています。
うつの症状が表れた場合に、すべてがうつ病というわけではなく、別の原因の可能性もあることを知っておく必要があります。
そして、お伝えしたように、何度も再休職を繰り返している場合には、うつの背景に別の原因がある可能性と、その原因として今回ご紹介した双極Ⅱ型障害と発達障害は、そもそも正しく診断をすることが難しいということを、多くの関係者の皆さんに知っていただき、参考にして頂ければと思います。
次回は双極Ⅱ型障害の特徴や治療と対応方法について、また次々回で発達障害の特徴と対応方法についてお伝えする予定です。
(まとめ:福井 弘枝=編集・ライター)
出典:「日経Gooday」2021年2月8日掲載
https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/20/111600039/020100004/
日経BPの了承を得て掲載しています