また、うつ休職?「大人の発達障害」の可能性も

休職の原因は「うつ」ではなかった。「大人の発達障害」とは?

 うつの症状で休職した会社員が、復職後に再休職を繰り返している場合、本当の原因は「大人の発達障害」だったというケースが、近年、大変増えています。発達障害は病気ではなく、生まれつきの脳機能の障害ですが、大人になるまで周囲に気づかれなかった「大人の発達障害」は、その程度が大変軽いのが特徴です。

人より得意なこと、優れた能力がある

 それは「本人の性格のせい」「やる気がないからだ」といった個人の人格的な問題とは関係なく、その要素は、程度の差こそあれ、誰もが多かれ少なかれ持っているものです。また、不得意なことがある一方で「人よりも得意なこと」「優れた能力」が突出するのも発達障害の特徴であり、医師や弁護士、著名人などに多いことが知られています。

 得意なこと、不得意なことを整理して自分の特性を知り、不得意なことを乗り越える対策を身につけ、得意なことをどう生かしていくかととらえることが大切です。

<この記事に掲載されている主な内容>
・大人の発達障害の特徴とは
・うつ病と診断されて休職したものの…
・人格的な異常ではなく、一定の割合で存在する
・得意な仕事、不得意な仕事
・もしかしたら発達障害かも?そんな時の相談先
・発達障害の人が働き続けるためのステップ

 ここでは当クリニックの五十嵐良雄医師が、日経BPのWebサイト「日経グッデイ」で連載していた記事を日経BPの許可を得て掲載しています。

障害の程度が軽く、周囲に気づかれずにきた「大人の発達障害」

第5回 大人の発達障害とは? 特徴を知って対策を身に付ける
2021/4/6 五十嵐良雄=精神科医・東京リワーク研究所所長

 皆さんの周囲に「うつの症状」による休職を2度、3度と何度も繰り返しているという方はいらっしゃるでしょうか。何度も休職、再休職を繰り返している場合、うつの症状の裏側に別の疾患=背景疾患が隠れていることがあります。

 前回は、ごく軽く短い期間の躁(そう)状態に気づけなければ診断できない「双極II型障害」が、うつの症状の背景に隠れているケースについてお伝えしました。

 今回は、休職を何度も繰り返す、本当の原因は「大人の発達障害」だったというケースをご紹介します。

 近年、「大人の発達障害」という言葉が使われることが増え、一般の皆さんにも知られるようになってきています。これをお読みの皆さんの中にも「聞いたことがある」という方もいらっしゃるのではないかと思います。

 発達障害は子供の頃に本人に近い家族が気づくことが多く、かつては子供の障害のようにとらえられていましたが、近年は、子供の頃から苦手なことがあっても、その障害の程度がごく軽く目立たないために、周囲が気づかないまま大人に成長し、社会に出ると環境になじめずに、うつなどの症状が表れるケースが増えています。

 そして、大人になってから発覚した発達障害を「大人の発達障害」と呼んでいるのです。

 私のクリニックでは、2005年からうつの症状で休職した会社員の復職を支援する「リワークプログラム」を行っていますが、2010年頃から「プログラム参加者の中に、どうも発達障害の傾向を持つ人がいるようだ」と感じることが増えました。


自分の得意な分野で、独りでコツコツと仕事をして成果を挙げてきた人が、出世してチームのリーダーなどになったときに、苦手な「周囲とのコミュニケーション」の場面に直面することもある  

病気ではなく障害の程度は人によってさまざま

 発達障害は病気ではありません。生まれながらの脳機能の障害です。障害と聞くと、厳しいことのように思うかもしれませんが、その程度はさまざまです。また、発達障害があるからと言って、働けないということでもありません。

 発達障害には「周囲とのコミュニケーションが苦手」「不注意によるミスや忘れ物が多い」といった苦手なことや困りごとがありますが、これらの表れ方やその程度は人によって違います。

 また、この障害が起こる原因ははっきりしていません。遺伝や体質など、いろいろな要因が重なり合って起こるとされており、また、人口に対して1割ほどと、一定の割合で発達障害の人がいることもわかっています。

プライバシーポリシー
© All Rights Reserved. メディカルケア大手町・虎ノ門