うつ症状の裏に別の原因が隠れているケース 双極Ⅱ型障害診断には「軽躁」の確認が必要

「双極Ⅱ型障害と診断すること」は、実は大変難しい

 さて最後に、これまでこの連載で「双極Ⅱ型障害」を繰り返し取り上げている理由についてお話しします。

 最大の理由は、私自身が精神科医として「双極Ⅱ型障害である」と診断することが難しいと感じているからです。

 軽躁状態はなかなか捉えにくく、また、発達障害や不安障害などが併存する場合にはさらに症状が複雑になり、診断の難易度が高い疾患であり、しばしば見逃されていたり、誤診されていたりすることも少なくありません。

 「双極Ⅱ型障害である」と診断するには、長い「うつ状態」の合間にやってくる「ごく軽い躁状態=軽躁(けいそう)状態」があることを確認する必要があります。

 しかし、本人ですら「今日はちょっと気分がいい」程度にしか感じない、わずか数日程度(4日間ほどと言われています)の「軽躁状態」を、「あれ?今日はちょっと様子がいつもと違う」と、捉えることは、家族や職場の人はもちろん、本人自身でさえ、かなり難しいことなのです。

 そしてもちろん、クリニックでの短い診察時間の中では到底、捉えることは難しい。そこで、医師よりもその人と接する時間が長い周囲の人や人事担当者が疑ってみること、本人の軽躁状態を把握することが、正しく病気を診断する助けになります。

 もしかしたら軽躁かも?と疑ってみるべき変化のポイントは次のようなものです。

こんな変化に気づいたら、
軽躁状態かもしれないと疑ってみてください。

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「軽躁状態がある」「あった」ことを確認できると、双極Ⅱ型障害という診断につながります。

【いつもより】
 ・声が大きい
 ・言葉の数が多い
 ・話が長い/話の内容が大風呂敷
 ・話し続ける
 ・やたらと明るい
 ・動きが速い
 ・話しかける相手が多い
 ・メール数が多い
 ・電話をかける回数が多い
 ・活動が活発だ
 ・人の話を聞かない
 ・予定外の行動が多い
 ・お金をたくさん使う
 ・イライラしていることが多い
 ・短睡眠時間でも活動できている
 ・怒りっぽい
  など

 ごく短期間であってもこのような変化が見られたら、その時期が双極Ⅱ型の軽い躁(そう)状態である可能性があります。

 そして、双極性障害は診断に引き続く薬剤選択が大事であり、それにより症状が安定してきます。正しく診断できていなければ、正しい薬が処方されていないことになります。うつによる再休職を繰り返している場合は、双極Ⅱ型障害の可能性を疑ってみることも、頭の隅に置いていただけたらと思います。

(まとめ:福井弘枝=編集・ライター)

出典:「日経Gooday」2023年11月29日掲載
https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/20/111600039/112100030/
日経BPの了承を得て掲載しています

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