コロナ禍でも「うつ休職」からの復職判定に役立ったリワークプログラム

職場という社会に戻るということ

 2019年12月に、中国の武漢市で第1例目の感染者が報告されて以降、日本国内でも横浜港に停泊中の客船内で、コロナ感染が確認され、また、亡くなる人も現れ、場合によっては死に至る恐ろしいものであるとの認識が一気に広まりました。

 人類はこれまでの歴史の中で幾多の感染症を克服して来ましたので、はじめはタカをくくっていました。しかし、感染が広がるにつれ、多くの人々が感染への不安を感じ、マスクを買い求めるために店頭に長蛇の列ができるなど、戦々恐々とした日々がはじまりました。

 そして、コロナ感染のパンデミックが明らかとなった2020年当時、すでに「うつ病」で勤務先を休職し、自宅療養中だった会社員の皆さんにとっても、大きな影響を与えることになったのは言うまでもありません。

 不眠や食欲不振、不安やおっくう感といった症状が現れて、医療機関を受診して「うつ」と診断された場合、いったん、仕事から離れて休息を取り、療養するために勤務先を休職するケースがほとんどです。

復職後に再休職せずに働けるかを見極めるのは大変難しい

 しかし、ある一定の期間の休息によって、症状が回復してきたら、今度は「職場に戻るための準備」が必要です。なぜなら、復職とは職場という社会に戻るということだからです。自宅で療養しながら過ごしてきた毎日と、出社して打ち合わせや会議に参加し、業務を行い、一定の成果を求められる毎日では、心身の疲労度が大きく違います。

 さらに、うつを発症することになった原因が、職場や自分自身に潜んでいる可能性もあります。

 ですから、在宅でずっと過ごしていた休職者が、復職後に休職前と同じように働ける状態にまで回復しているのかどうかを見極めることは、実はとても難しいのです。

 そこで、当クリニックが用意しているのが「リワークプログラム」です。リワークとはRe-Work=仕事に戻る、という意味です。このプログラムがどういうもので、具体的にどのようなことを行うのかについては、ぜひ以下の記事をお読みください。

 ここでは当クリニックの五十嵐良雄医師が、2020年12月に日刊ゲンダイヘルスケアプラスに掲載した記事を日刊ゲンダイ編集部の許可を得て掲載しています。

うつ病の復職を失敗しない!注目される再休職予防プログラム

日刊ゲンダイヘルスケア 2020年12月29日公開記事

 新型コロナウイルスの影響で増加が指摘されているうつ病だが、うつ病では「復職のタイミング」も重要な治療ポイント。そこで改めて注目を集めているのが、復職支援と再休職予防を目的にした「リワークプログラム」だ。

 このプログラムを2005年に立ち上げた「メディカルケア大手町/虎ノ門」理事長の五十嵐良雄医師に話を聞いた。

 「コロナによる在宅勤務が増え、その間、精神科医や産業医は会社が社員に在宅勤務をさせている状態で『復職可能』かどうかを判断せざるを得ませんでした。

 しかし、それで復職可能となった人の中で、在宅勤務中はなんとか仕事をこなせていたが、出社する従来のスタイルへ戻った途端、再休職となった人が少なからずいます。在宅勤務で復職しても継続できず、再休職した人もいます」

 というのも、「在宅勤務での復職可能」と、「出社での復職可能」とでは病気の回復レベルが違うからだ。

 場所を選ばず柔軟に働けるテレワークと違い、コロナ禍で、いや応なく始まった在宅勤務は「感染拡大を防ぐために自宅で」というもの。

 以前から自宅での仕事が普通だった人、会社で多くの人とコミュニケーションを取りながら仕事をするのが苦手な人にとっては在宅勤務がむしろ楽だが、自宅では、小さな子供がいたり、部屋数が限られていたり、仕事経験が浅く上司の指示を常に仰ぎたい人には、苦痛でストレスがたまる。

 「個人の要因が大きく関わってくるのが在宅勤務。この状態でうつ病の人の復職状況を的確に判断するのは困難です」

 それらをクリアするのに役立つのが、リワークプログラムだ。

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