うつの人の中に「発達障害」が多いと気付いた

うつ再休職を繰り返している場合、「うつ」とは別の要因が隠れているかもしれません

 ある時、クリニックを受診する患者さん達の中に「おや、この人は…?」「ん、この人も?」と、発達障害の患者さんがいることに気づいた。

 発達障害は、子供の頃に周囲に気づかれる場合は、障害の程度が強いが、大人になるまで周囲に気づかれなかった発達障害は「大人の発達障害」といって、障害の程度は軽いのが特徴だ。

 しかし、軽いとはいえ、本人にとっては障害由来の苦手なことや困りごとがあり、社会人になって仕事では「できないこと」や「うまくいかないこと」に直面して困ることが増える。そうした「困りごと」にストレスを感じて「うつ」の症状が表れる場合も多い。

「大人の発達障害」向けのプログラム

 そのため、「うつ病である」と他の病院などで診断された人の中には、実は、その、うつの症状を引き起こしている原因が「発達障害」であった、というケースもめずらしくはない。もしかしたら?と思ったら、正しく診断を受けることが、まず第一歩だ。

 発達障害は周囲には理解されにくいため、自分の困りごとを誰かに相談する機会もなく、ひとりで困り事の悩みを抱えている人も多い。そこで、新たに「大人の発達障害」の人同士が互いにサポートし合う場となるプログラムを設けることにした。

<この記事に掲載されている主な内容>
・当院の休職患者の2~3割は発達障害と気づいた
・発達障害患者向けのプログラムを開始
・このプログラムの最大の特徴は「患者同士がサポートし合う場」
・参加者の中で、経験や知恵を共有し、「不適応なこと」を乗り越える術を身につけられる
・「対人関係などのトラブルが減った」と話す利用者は少なくない

 ここでは当クリニックの五十嵐良雄医師が、日刊ゲンダイヘルスケアプラスに掲載した記事を日刊ゲンダイの許可を得て掲載しています。

大人の発達障害に効果 リハビリプログラムを実施医が解説

日刊ゲンダイヘルスケア 2017年11月22日公開記事

 成人の発達障害の「生きづらさ」解消に役立つとして、リハビリテーションプログラムが注目を集めている。

 「働くビジネスマン」に特化したリハビリテーションプログラムを立ち上げ、治療の一環として実施しているのが「メディカルケア虎ノ門」(東京・虎ノ門)だ。

 「うつ病などで休職中の患者に『実は発達障害』という人が多いことに気づいたのがきっかけです。当院の休職患者の2~3割は発達障害です」(五十嵐良雄院長)

 2013年に休職中の発達障害患者向けのプログラムを開始。そして翌14年、就労中の患者向けの「ピアサポートグループ『マンスリー・コムズ』」を開始した。働きながらでも受けられるように、月1回、土曜日に行っている。

 最大のポイントは「患者同士がサポートし合う場」である点だ。プログラムの対象を「児童期および思春期に発達障害の診断を受けていない成人」に限っていることとも関係している。

 発達障害は生まれつきの障害だが、成人になるまで診断を受けたことがない人は、発達障害自体は軽症だ。

 「こういう人は『興味のあることには集中して取り組む』など疾患の特性から、学習面で高い能力を有していることが多い。だから学生時代は問題なく過ごしてきたが、社会人になって、対人関係などで不適応を起こしている」(五十嵐院長)

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