患者さん本人の気付きがきっかけで、診断が双極性障害(双極Ⅱ型障害)に変わったケース

台風は強大な低気圧のため、適応できなければ気分・体調に影響する

 話を台風に戻しましょう。台風は、とても強い低気圧ですから、台風が近づいてくるとともに、気圧が大きく変化します。この変化に適応することができない場合に、気分や体調に影響が出てくると考えられます。

 Aさんのグラフでは、大きく分けて「意欲・気力」「思考・集中力」「体力・活動」の3つの項目について、その日のそれぞれの状態がどの程度かを、縦軸の1~5までの5段階で表しています。

 上下に大きく振れている赤色のカーブは、先に挙げた3つの項目、「意欲・気力」「思考・集中力」「体力・活動」の平均値の推移です。常に小さい波があることが分かりますが、台風が近づくにつれて波が大きくなるのと同時に、平均のレベルが大きく上下しています。

 Aさんは月に1回診察のためにクリニックを訪れ、「年ごとに小さい波は少なくなってきている」と言います。それでも、台風の発生は今でも分かりますし、日本に影響を及ぼすほど大きな台風の場合、ご本人の気分・体調は大きく変化しますが、やり過ごすようになりました。先が見えると、気分も少しは楽になるものです。

 その影響の度合いは、昔よりは少なくなってきていると教えてくれました。長く、診察を続けている主治医としては、天候による影響を受けて症状が悪くなっていても、年々その影響の程度が軽くなってきているということが、病気の回復度を表しているのだと考えています。ただし、彼の治療はまだ少し続ける必要があるとも考えています。

 Aさんの場合には気圧の変化が症状に大きな影響を与えていました。一般的に言えば、現在のAさんのストレス要因と言えます。気分障害で悩んでいる方は、その方なりのストレス要因があります。気候だけではなく、職場や家庭での対人関係もストレスになります。それによって症状が変化するのですが、自分の症状を記録し、それを自分のストレス要因と関連付けて主治医に知らせると、診断が変わることもあります。よりよく治っていくために、まず、自分自身が自分の症状とストレス要因を知ること、そして主治医とコミュニケーションを持つことの大事さをAさんは教えてくれています。

(まとめ:福井弘枝=編集・ライター/図版制作:増田真一)

出典:「日経Gooday」2023年9月27日掲載
https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/20/111600039/092200028/
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