具体的かつ、シチュエーション別に対策を100個用意する
対策を100個作るコツは、とにかく具体的に対策の内容を書き出すことです。
例えば、
・「笑う」ではなく「YouTubeでお笑い芸人の動画を見て笑う」
・「体を動かす」は「駅前のスポーツジムで筋トレをする」
という具合です。このように誰が読んでも同じことを再現できるくらい具体的に書き出します。バリエーションは多ければ多いほどいい。
なるほど、抽象的に挙げると100個も考えるのは難しいけれど、具体的に挙げるなら100個くらいは挙げられそうです。また、こうして具体的な行動を挙げていくとバリエーションも広がります。
例えば、同じ「体を動かす」というアクションでも、「自宅周辺を30分ランニング」「食後にスクワット30回」「寝る前に腹筋100回」と、具体的に考えていくとバリエーションが増えます。
対策のバリエーションと数がたくさんあることで選択肢が広がり、疲れてヤル気が出ない時でも、できるものを見つけやすい、どれか一つを試して効果が薄い場合は次々に試すことができる、といったメリットがあります。
さらに、シチュエーション別に用意しておけば、もっと活用しやすくなります。
それは、こんな風に
・頭の中でやる/体を動かす
・職場でできる/家でできる
・費用がかかる/かからない
・独りでできる/皆でやる
・平日にできる/休日にできる
具体的なシチュエーション別に作っておくと、その時の状況に合わせて、選びやすくなります。
ストレスを感じていても、いなくても毎日ストレスを予防する
そして、ストレスは実は「ためずに予防が大切」です。
もちろん、ストレスを早期発見して、早期対処することは大事ですが、ストレス対処法というと、発散する方にばかり頭が行きがちで、「予防する」という発想はあまり持っていない人が多いのではないかと思います。
でも、実は、普段の生活の中でストレスを蓄積しないようにするためには、自分の作った100選の中から“ストレスを自覚する前に”対処法を実行して、症状が現れる前に予防することが重要です。
「ストレスフルな出来事があってから」、あるいは「強い疲労感などのストレス反応が起きてから」対処するのではなく、日常的に、食事を1日3食、一定の時間に食べるのと同じように、ストレスを感じていても、いなくても、一定のリズムで毎日、対策を実施しておく。そして、もちろん、その日のストレスはその日のうちに解決しましょう。
さらに、もっと効果を高めるやり方もあります。
ストレス対処効果を10点満点で点数化して、評価する
今回挙げた100個の方法について、それぞれの「ストレス対処効果」を、自分で10点満点で点数化しましょう。
コロナ下の現在では難しいものもありますが、自分が「楽しい」「癒やされる」「気持ちがラクになる」「リフレッシュできる」と感じる具体的な方法を、自分で見つけてリスト化しておくと助けになります。
・カラオケに行って好きな歌を歌う: 効果 9点
・問題を整理して、対策を考える: 効果 8点
・バッティングセンターに行く: 効果 8点
・ドライブに行く: 効果 8点
・風呂で大声で歌う: 効果 8点
・人気芸人のお笑い動画を見る: 効果 8点
・家の周辺でランニングする: 効果 7点
・子猫の動画を見てかわいさに癒やされる: 効果 7点
・楽しかった旅行の写真を眺めて思い出にひたる: 効果 6点
・コンビニで缶ビールを買って帰って飲む: 効果 6点
・図書館に行って読みたい本を探して借りる: 効果 5点 など
といった具合です。
そして、毎日、「○○をやって△点獲得」、「××で◆点追加」と加算していき、今週は合計◎点ストレス対処した、という記録をつける方法です。
少し手間はかかるものの、例えば週の半ばに「今週はまだ▲点分しかストレスへの対処ができていないから、今日は◇◇をやっておこう」と計画的に対処、予防することができます。「明日やろう」ではなく、こまめに取り組むことがカギです。
「早期発見、早期対処、毎日予防が有効」の個人スキル
いかがでしょうか? リワークプログラムに参加した人たちの中には、こうしたストレスのマネジメント法を知って、「こういう手もあるのか!」と驚く人がいます。「苦手な上司に、強いストレスを感じる前に、こうやって日頃から自分を守る方法もあるのだ、目からウロコが落ちた」という人もいます。
ストレスフルな現代の職場環境では「ストレス対処は、もはや個人のスキル」と考えましょう。ストレスを自覚する前に、日常的に一定のリズムで対処法を毎日実行することが大事です。その日のストレスはその日のうちに解消する。その芽が小さなうちにしっかり摘む。早期発見、早期対処、毎日の予防が有効です。
これはもう、リワークプログラム参加者だけでなく、今まさにストレスにさらされているビジネスパーソンの皆さんにこそ伝えたい。是非、お役立てください。
(まとめ:福井 弘枝=編集・ライター)
出典:「日経Gooday」2021年7月8日掲載
https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/20/111600039/062800010/
日経BPの了承を得て掲載しています