ストレス―――。現代を生きる私たちにとって、もはや避けては通れないのが、この「ストレス」です。前回、このストレスに対抗する力=レジリエンス(自己回復力)を身に付けることで、その影響を軽くできるという朗報をお伝えしました。
今回は「では、具体的にどのようにしたら、私たちは『レジリエンス』を獲得できるのか」というテーマで、前回に続き、杏林大学医学部精神神経科学教室 渡邊衡一郎教授にお話をお聞きしています。
いま、レジリエンス力が低くても挽回できる
渡邉先生は、レジリエンスを生み出す要素は複数あると言い、これを「ストレス防御因子」としてまとめています。また、もともとレジリエンスが低い人の場合、その人が生まれ育った環境や家系的遺伝が影響していること、その場合でも「ものの考え方」「運動」「健康的な生活」によって、レジリエンスは挽回できると話します。
では、具体的にどのようにしたら、ストレスに対抗できるレジリエンス(自己回復力)を高められるのでしょう。今回は、自己回復力を高めて、ストレスに強い「こころと身体」を得るための方法をお伝えします。
<この記事に掲載されている主な内容>
・何がレジリエンス増強につながるのか
・いまレジリエンスが低くても、挽回できる
・興味と熱意、自己効力感が自分自身を支える
・運動と栄養がレジリエンス増強をサポートする
ここでは当クリニックの五十嵐良雄医師が、日経BPのWebサイト「日経グッデイ」で連載していた記事を日経BPの許可を得て掲載しています。
ストレスに強くなるレジリエンス(自己回復力)を獲得しよう
第15回 どうしたらレジリエンスを身に付けられる?
2022/9/14 五十嵐良雄=精神科医・東京リワーク研究所所長
現代を生きる私たちにとって「ストレス対策」は、もはや自分を守るめの必須事項と言えるでしょう。この連載では毎回、ストレス対策の専門家の方々に、具体的な対応策をお聞きしてお伝えしています。今回は「レジリエンス(回復力)」について、前回に引き続き、杏林大学医学部精神神経科学教室 渡邊衡一郎教授にお話を伺っています。
五十嵐 前回は、「回復力」「復元力」「弾力性」という意味を持つ「レジリエンス」について、どういうものなのか。どういう効果を発揮するのかについてお伝えしました。
仮に、自分が何か強いストレスを受けて、気分が落ち込むようなことがあったとしても、「レジリエンス(回復力)」を身に付けていれば、そのストレスに「対抗できる」「跳ね返せる」という、その実例を渡邊先生にご紹介いただきました。
例えば、イギリスでは2020年のコロナウイルス感染拡大以降、当初のロックダウン時には人々の不安が強く、うつの症状が現れる人も多数あり、その影響は大きいものだったと聞いています。
しかし、やがて「時間の経過と共に、人々にレジリエンス力(回復力)がついて、徐々に状況に慣れ、不安やうつの症状が軽減していった」という研究結果や、「レジリエンス(回復力)が高い人ほど不安やストレスを受けにくい」という米国の研究結果などをご紹介いただきました。
これらの例から、ストレスフルな現代社会を生きる我々にとって「レジリエンス(回復力)」は必要なものであり、ぜひとも身に付けたいものであると実感しました。今回も前回に続き、渡邊先生にレジリエンスについてお聞きします。