気楽に実践できる小さなコーピングをたくさん持つ
おそらく皆さんは、何らかの困りごとやトラブルに遭遇して、気分が落ち込んだときなどに「ちょっと、気分転換しよう」と、目の前の困りごととはまったく違うことや、自分の好きなことをやってみたことがあるのではないでしょうか。
「好きな音楽を聴く」「おいしいスイーツを食べる」「お風呂に入って寝る」「身体を動かす」「ベランダに出て外の空気を吸って、空を見る」など、誰でもいくつかは自分の気分を変える方法を持っているのではないかと思います。実は、これらを「ストレスに対する対処」として意図的に行うこと、これが「コーピング」です。
「え、そうなの!? コーピングってそういうこと!?」と拍子抜けするかもしれません。ストレス心理学の世界には「コーピングは、本格的でなくても、とにかくたくさん持っていた方がいい」という考え方があります。
特別、立派なものでなくてもいい。どんなに「しょぼい」ものでも、日常の中で気楽に実践できる小さなコーピング=自分助けの方法をたくさん持っておこうという考え方です。
「あれもコーピング」「これもコーピング」と考えているうちに、気づけばストレスが消えているかもしれません。「コーピングを考えること」がすでにコーピングなのです。
質よりも量! とにかく、たくさん用意することが大事
この考え方に基づいて作るリストを「コーピングレパートリー」と呼びます。
皆さんも、自分を助けるコーピングを書き出してみましょう。とにかくたくさん、数を増やすことが大事です。質より量。レパートリーは少なくとも100個は作って、持っているとよいでしょう。
100個!? そんなに思いつかないよ、と初めは思うかもしれませんが、あれこれ考え出すと意外とたくさんあるものです。ストレス対策として、とにかくたくさんのコーピングレパートリーを持っておきましょう。
なぜ質より量なのか? それは「たくさんあれば、選択肢が広がるから」です。コレがダメならアレを、アレがダメならこっちを!と、いろいろ試すことができる。ストレスを感じたときの対処法の数は、多ければ多いほどいいのです。
時間もお金もかからないコーピングをたくさん用意する
さて、コーピングを考える上で着目したいのは「時間とお金のコスト」です。旅行や外食、買い物などは、一見楽しそうですが、一方で時間もお金もそれなりに必要となり、すぐに試せるとは限りません。
ストレスを感じたときの対処としては、いつでも、どこでも、すぐに気軽に試せる方がありがたい。それが「すぐにできて(時間がかからず)お金もかからない(気楽に試せる)ローコストなコーピング」です。
例えば、
・お気に入りのアーティストの歌を聞きながら一緒に大声で歌う
・行ってみたい国の絶景写真を眺めて、旅を妄想する
・ネット動画の「痩せるダンス10分」を見ながら身体を動かす
・ネットのオモシロ動画をしばし眺めて笑う、猫や犬などの動画に癒やされる
・部屋の床を雑巾がけしてスッキリする などなど
自分の趣味や好みに合わせて、すぐに実行できてお金もかからないコーピングをたくさん用意しておけば「これがダメなら、今度はこっち」と次から次へとトライできます。
そして、自分のコーピングレパートリーを書き出したら、いつでもストレスに対処できるように持ち歩くことをお勧めします。リストを作ってクリアファイルに入れて持ち歩いたり、スマホやタブレットにデータとして保存したり、あるいは単語帳に一つずつ書き込んで持ち歩き、ストレスを感じたら取り出してパラパラめくるという人もいます。
さて、ここまでをまとめておきます。
ストレスを感じたら
(1)それがどういうストレスなのか(=ストレッサーは何か、どんなストレス反応があったかなど)をモニタリング(観察)する
(2)自分のコーピングレパートリーの中からコーピングを小まめに行う
と、なります。
そして、コーピングを行ったら、その結果(効果)を100点満点で点数を付けて記録しておきましょう。ストレス対策としての効果を感じたか、あまり感じなかったか。点数化して、どういうストレスに対して、どういうコーピングに効果があるのかを、記録しておくことをお勧めします。
これを繰り返して続けるうちに、「このコーピングは、このストレスには不向きだな」「このストレスにはこのコーピングが効いた」といった効果の検証ができ、これを積み重ねることで、やがては特定のストレスに対して最大の効果を得られるコーピングの組み合わせを見つけることにつながります。