他人になり切り、論理的な根拠を示すことで自分自身が納得する
(5)あなたは、こうした反応に、根拠を持って答えましょう。
他人になり切って、冷静に論理的な根拠を示して、対話を繰り返し、相手が納得できれば、実はあなた自身が納得できたということになります。
相談される役割を、自分ではなく誰か、知り合いや有名人、歴史上の人物などに置き換えてみるのもいいでしょう。つまり、「歴史上のあの人物なら何と答えるだろうか」という想像をしてみることになります。
この状態は、相談者も回答者も自分以外の人間という設定になり、より第三者的な視点で状況を検討して判断できるようになり、自分の悩みとだけ向き合っていては持ち得ない視点を手に入れて考えられるというものです。
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さて、今回は、ストレス・コーピングの第一人者である伊藤絵美先生が提唱する「コーピングとはどういうものか」についてお伝えしてきました 。
コーピングはクルマを運転する技術と同じ
伊藤先生は「コーピングは一種の技術」と著書の中でおっしゃっています。ピアノを弾く、クルマを運転するといった技術と同じである、と。マニュアルを読むだけではピアノを弾くこともクルマの運転もできません。実際にやってみて効果を確認し、繰り返し行うことで技術となって身につく。これも、ピアノやクルマの運転と同じです。
次回は、認知行動療法、マインドフルネスなどについてお伝えします。
今回ご協力を頂いたのは…
伊藤絵美(いとう えみ)さん
セラピスト(公認心理師、臨床心理士、精神保健福祉士)、洗足ストレスコーピング・サポートオフィス所長、千葉大学子どものこころの発達教育研究センター特任教授
慶応義塾大学文学部人間関係学科心理学専攻卒業、同大学大学院社会学研究科博士課程修了、博士(社会学)。
2004年より、認知行動療法に基づくカウンセリングを提供する専門機関「洗足ストレスコーピング・サポートオフィス」を開設、所長を務める。主な著書に「セルフケアの道具箱―ストレスと上手につきあう100のワーク」(晶文社)、「コーピングのやさしい教科書」(金剛出版)、「世界一隅々まで書いた認知行動療法・認知再構成法の本」(遠見書房)など多数がある。
(まとめ:福井 弘枝=フリーライター)
出典:「日経Gooday」2022年4月5日掲載
https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/20/111600039/032500013/
日経BPの了承を得て掲載しています