ストレスは私たちの「脳」に影響している

身体はストレスから身体を守るため、ホルモンを分泌している

 ここ数回、「ストレス対策」をテーマにお伝えしています。今回は、そもそも私たちがストレスにさらされると、身体はどう反応して、どういう対処しているのか。もし、強いストレスを受けた場合、私たちはどう対応すればいいのかといったお話を、精神科医で東京大学名誉教授でもある、昭和大学・発達障害医療研究所所長の加藤進昌先生にお聞きします。

ストレスと「脳の海馬」は無縁ではない

 加藤先生は「そもそも、私たちの身体はストレスを感じると、腎臓の上にある副腎という器官から、『ステロイドホルモン』というホルモンを分泌して、血圧を上げ、血糖値を上げ、ストレスに対抗する反応を引き起こして、身体を守ろうとします」と言います。

 私たちが意識せずとも、身体は自分の身を守ろうと反応している、というわけです。

 しかし一方で、これまでの研究では「ストレスを受けると脳の海馬のある部分の細胞が死んでしまう」ことも知られるようになりました。つまりストレスと「脳の海馬」は決して無縁ではないということが分かってきたのです。

 今回は「ストレスと脳」というテーマでお話をお聞きします。

<この記事に掲載されている主な内容>
・ストレスと脳の海馬は決して無縁ではない
・命の危険に関わる戦争時などに多くみられたPTSD
・地下鉄サリン事件被害者を対象にPTSD研究を実施

 ここでは当クリニックの五十嵐良雄医師が、日経BPのWebサイト「日経グッデイ」で連載していた記事を、日経BPの許可を得て掲載しています。

強いストレスは脳を萎縮させるのか?

第9回 脳研究の第一人者・加藤進昌 東京大学名誉教授に聞く(1)
2021/12/13 五十嵐良雄=精神科医・東京リワーク研究所所長

 現代社会で働く我々にとって、日々の「ストレス」にどう対処するかは、もはや必須のビジネススキルの一つと言っても過言ではありません。自分がどういう状況、相手、トラブルにストレスを感じやすいか。また、自分に合う、ストレス解消効果の高い対処法を持っているか。自分自身でストレスに対処していくというセルフケア意識を持つことが大事です。

 この連載では何回かにわたりストレスをテーマにさまざまな角度からお伝えしています。今回は精神科医で東京大学名誉教授であり、昭和大学 発達障害医療研究所 所長でもある加藤進昌先生に、「ストレスと脳」というテーマで「ストレスが私たちの脳にどう影響するか」について、お話をお聞きします。

 加藤先生はPTSD(心的外傷後ストレス障害)研究の第一人者であり、国内にPTSDという言葉を定着させた研究者でもあります。

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