現代社会において、ストレスを感じることは、もはや日常茶飯事です。毎日の中で、ストレスに直面しない日を探す方が難しいかもしれません。
しかし、ストレスで体調を崩してしまっては元も子もありません。大切なのは、自分の身を守る「自分に合ったストレス対策方法」を持つことです。
とはいえ、ひと口に「ストレス」といっても、実は原因も程度もさまざまあります。
症状や悩みの深さ、程度に応じた対応を
「これを試したけれど、あまり効果がなかった…」
「いつもなら、これで回復するのに、今回は歯が立たない!」
そんな時のために、今回はストレス対策の方法として有効性が認められている手法を、ストレス対策の専門家であるセラピストの伊藤絵美先生にお聞きして、紹介していきます。
「その手があったか!」という、簡単なのに効果が大きい手法=「思い直し」や、近年、その有効性に伊藤先生自身も驚いているという手法=「マインドフルネス」、そして、こころの奥、深いところで傷ついている人に向けた手法=「スキーマ療法」など、症状や悩みの深さ、その程度が異なる「つらさ」への対策として、さまざまな手法をご紹介します。
ぜひ、参考になさってください。
<この記事に掲載されている主な内容>
・ストレスは自分で気づかない限り、ケアできない
・軽い段階でストレスに気づくには自分を観察すること
・「思い直し」の技術で気持ちはラクになる
・良し悪しの評価をせず、受け止めて手放すマインドフルネス
・心の奥底、深いレベルにある「スキーマ」
ここでは当クリニックの五十嵐良雄医師が、日経BPのWebサイト「日経グッデイ」で連載していた記事を日経BPの許可を得て掲載しています。
知っておこう、悩みの深さ・程度によって有効策アリ
第13回 認知再構成法、マインドフルネス、スキーマ療法とは
2022/6/29 五十嵐良雄=精神科医・東京リワーク研究所所長
現代を生きる私たちにとって「ストレス対策」は、もはや自分を守るための必須案件と言っていいでしょう。この連載では、ストレス対策分野の専門家の方々に具体的な対応策をお聞きしてお伝えしています。
今回は、前回に引き続き、この分野の第一人者であるセラピスト、公認心理師の伊藤絵美先生にお話を伺い、「認知再構成法」「マインドフルネス」「スキーマ療法」について紹介します。
ストレスを抱えた数多くの患者さんたちにカウンセリングを行っている伊藤絵美先生は「ストレスを感じたら放置せずに、できれば、その日のうちに意図的にストレス対策を行う方が良い」と明言します。
その理由を先生はこう説明しています。「放置しておくと、自分では気づかないうちにストレスをため込むことになって、苦しくなり、体調を崩しかねない。そうならないために早期対策が必須です」。
ストレスは自分で気づかない限り、ケアできない
五十嵐 ストレスに対して、早期に対策するコツは何でしょうか。
伊藤絵美・公認心理師(以下、伊藤CPP=Certified Public Psychologist) まず何と言っても「自分がストレスを感じたと気づくこと」です。そもそも、自分が気づいていないとケアできませんから。
伊藤絵美さんの著書の1つ『セルフケアの道具箱』
ストレスと上手につきあう100のワークを掲載
伊藤CPP そして、そのためにはまず、「自分がストレスを感じた時に、自分にどういう反応が表れたのかを思い出してみること」です。この反応を「ストレス反応」と言い、実は個人差が大きくあります。
例えば「その場から逃げ出したい!と思った」「顔が引きつった」「冷や汗がどっと流れた」「目の前が真っ暗になった」「急に気分が悪くなってトイレに駆け込んだ 」など。
その時、どんな考えが浮かび、どういう気持ちになり、身体にどんな反応が表れたか。その結果、どういう行動を取ったか。実は、こうした自分の「ストレス反応」を知ることは、自分を守るために、とても大事です。
なぜなら、「ストレスを感じると自分にはこういう反応が出る」と自分の特徴を知っていれば、「ストレスを感じた」と気づくことができ、また、その影響の度合いを測るバロメーターになるからです。
五十嵐 なるほど。では、そのための自分の観察方法と、それを継続するコツはありますか?