いまレジリエンス力が低くても、挽回できる
五十嵐 これらは、いま自分に身に付いていないと思われる場合でも、今後、獲得できるものなのでしょうか。
渡邊 はい。例えば、もともとレジリエンス(回復力)が低い人の場合、実は、これには生まれ育った環境や、家系的な遺伝が一部影響していることがわかっていますが、だからといって絶望する必要はありません。
「レジリエンスを高めるようなものの考え方」や「運動」、「健康的な生活」などを取り入れることで、ある程度、挽回できることが証明されています。
五十嵐 それは朗報ですね。では、具体的に私たちは、どういうことをすればレジリンエンス力を高められるのでしょう?
渡邊 それを示しているのが次の図です。
渡邊 これは2020年のアメリカでのコロナウイルスによるロックダウン時に、全米50州において、ステイホーム(自宅にいるように)指示された1004名に対して行った「レジリエンスと日常生活活動と社会サポートの関係」を調査した結果を表わした図です。
縦軸はレジリエンスの程度、上に行けば行くほど高くなります。横軸は日常生活活動や社会的サポートがどういう状況であったか。右に行けば行くほど日常生活活動や社会的なサポートが充実しているとみます。
この研究では、ロックダウン中、グラフ下の黄色い部分の内容がレジリエンスの高さに関係したとみています。つまり、ロックダウン中であっても、下記のような行動を行っていた人はレジリエンスが高かったということです。
<ロックダウン中でも、下記行動を行っていた人はレジリエンスが高かった>
・「1週間の内、10分以上外出して日光の下にいる日数が多い」
・「毎日の運動にかけている時間が長い」
・「家族からのサポートがある」
・「近しい存在からのケアやサポートがある」
・「友人からの社会的サポートがある」
・「不眠がない」
・「祈る」
宗教が実はレジリエンスに良いという考え方もあり、何かに集中する、何かを信じるといったこととも相関したと考えられています。
そして、一方で、レジリエンスが低い人たちの特徴としては下記のような内容が報告されました。
<レジリエンスが低い人達の特徴>
・「うつや希死念慮(死んでしまいたいと思うこと)や不安が重篤」
・「コロナウイルスへの恐怖が強い」
・「将来への不安が大きい」
・「メンタルヘルスへの影響を心配」
この調査結果からわかることは、やはり、レジリエンスが低い人は「うつ」や「不安」になりやすいということ。
そして、もう一つ、大事なことは、レジリエンスが高い人たちの行動を参考に、その行動を私たちが日常に取り入れていけば、レジリエンス力を上げることにつながる。
つまり、いま、自分のレジリエンスに不安があったとしても、レジリエンスを増強する手段があるということです。
「日光に当たる」「運動する」「家族や友人からのサポートを得る」「よく眠る」「集中する」といった行動を、自分の生活に取り入れて、レジリエンス(回復力)を高めましょう。