興味と熱意、自分が役立っているという自己効力感が心の支えに
渡邊 今度は米国の研究で、最前線の医療従事者におけるレジリエンスに関する研究結果をご紹介します。
これは米国で、ちょうどコロナ禍期にあたる2020年4月から5月にかけて、医療従事者3360名に対して実施した調査です。この時期、彼らの約8割は、実際に直接コロナ感染患者のケアに当たっていました。コロナ感染者の治療に当たるということは、自分が感染してしまうのではという危険と常に隣り合わせであり、その心理的、身体的負担は大変大きいと想像できます。
この調査は、そのコロナ治療の最前線にいた彼らが「どうやって自分を支えていたか」という、レジリエンスに関係する因子(要素)を調べたものです。
調査結果の上位は「自分が興味を持つこと」「自分がコロナ治療に役に立っているという自己効力感」「自分が熱意を持っていること」といったものでした。
自分も感染してしまうかもしれないという不安から「アルコール」や「ドラッグ」といったものに頼るケースがあってもおかしくありませんが、実際は、自分が興味や、熱意を持って物事に取り組み、そして自分がコロナ治療に役立っているという自己効力感を心の支えにしていたという結果となりました。これも、レジリエンス(回復力)を高める要素と言えるでしょう。
さて、次は英国と米国の治療ガイドラインで、うつ病軽症者に対する「第一推奨治療」(最初に推奨する治療)についてお伝えします。