「コロナがもたらしたストレス」への対策とは

 また、パソコンやプリンターなど、仕事をするのに十分な機器やそれらを置くスペースがあるか。そうしたものがそろっていて、テレワークに向いている職場環境を自宅に作れるかどうかという点は、とても重要な要素です。

 モノだけではなく、ほかに家族との関係もあります。パートナーが共働きで、仮に2人だけの世帯であれば、お互いに協力し合い、家事なども共同で行うなどして、在宅勤務がとてもうまくいっている例が、私の患者さんにもたくさんあります。

 一方で、パートナーが主婦で、小さいお子さんがいて、よく泣き出すとなると、家での仕事はなかなかうまくいかないことも多い。家族が気になる、逆に家族が自分を気にすることにもなります。息を潜めて仕事をしているようでは長続きしません。

対人関係が苦手な人は体調が好転する

【3】そして3番目、「もともと、対人関係が苦手な人」

 もともと対人関係が苦手な人は、在宅勤務で体調が好転します。特に、会社の中で上司や同僚、客先などとの対人関係に悩んでいた人たちは、在宅勤務になったことで、一転、苦手な相手と会わなくて済むようになります。このような対人のストレスから解放されて、悩まずに済み、うまくいくことが多いでしょう。

【4】うまくいっている人たちが多い業種・職種あり

 そして、さまざまな制限がある中でも、うまくいっている人たちが多い業種・職種があります。これが4番目の条件です。

 遠隔で仕事ができるIT業では、仕事がうまく進みます。なかでも、ベテランの人は結構うまくいっています。

 しかし、新人の人は仕事を教わったり、相談できたりする人がそばにいないと仕事ができません。直接面と向かって教わればさほど時間のかからないことでも、リモートワークでは手間と時間がかかります。このために在宅勤務ではよほど配慮してもらわないと、仕事がうまくいかなくなります。

在宅勤務が向いていない人は「在宅勤務中に休職」を避けるために早期受診を

 ここまで在宅勤務がうまくいく人のパターンを伝えてきましたが、「在宅勤務が向いていない人」もいます。

 在宅勤務というのは「家で、休日のように、自由に何をしていてもいい」というわけではありません。勤務ですから、アウトプットや成果を出さなければなりません。

 自分でペースを作れない人や、周囲から助言をもらうことで業務を行っていた人などは、周囲とのコミュニケーションがなくなり、相談や助言をもらうこともできず、思うように仕事の成果を出せなくなる。こうして在宅勤務が向いていない人が、あぶりだされてしまうのです。

 そういう人たちは、在宅勤務が長く続くと、気持ちが落ち込み、眠れない、食欲が減退する、気力がなくなるといった、うつの症状が現れるようになり、休職に至ることもあります。在宅勤務中に休職するというケースです。実際に私はこれまで既に、在宅勤務となってうつを発症した方の休職の診断書を何人も書いています。

 そして、コロナ感染を恐れて医療機関に行くこと自体に抑制がかかって、受診しない人もとても増えていると思われます。かなり体調が悪くなってから、やっと受診するのでは、治るのにも時間がかかります。

 ですから、体調に不安を感じた段階で早めに医療機関を受診してほしいと思います。マスクや手洗い等、十分な対策を取って、体調が悪化する前に早期に医療機関を受診してください。

(まとめ: 福井弘枝=編集・ライター)

出典:「日経Gooday」2020年12月1日掲載
https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/20/111600039/112500002/
日経BPの了承を得て掲載しています

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